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2018年12月30日日曜日

地面を蹴らない移動

 地面を蹴らずに移動するには「前方から引かれるように移動」などと言われたりします。実際に身体を引っ張っているのは、重力です。

 体重を、両足均等に支えているところから動き出す場合。
 最初の動き出しは、移動したい側の力を抜くことです。身体は支えを失って倒れてゆき、移動が始まります。
 しかし、全身で倒れるのでは、この動作は遅くなってしまいます。

 学校の掃除の時間に、ホウキを逆さまにして手のひらに立て、遊んだことはありませんか? あれは長いホウキだから簡単なので、短い棒(例えば金槌)ではうまくいきません。すぐに倒れてしまって、バランスが取りにくいからです。

 長さが短いと、僅かに動くだけで、大きく傾くことができます。
 例えば、長さ1.5メートルのホウキと、30センチの金槌があるとします。ホウキが30度まで傾くためには、ホウキの頭が80センチ動かなければなりません。しかし金槌が同じ傾きになるには、16センチ動くだけで十分です。
 倒れる力は、傾きが大きいほどに大きくなるので(横方向の分力が大きくなる)、短い方が加速が早くなる理屈です。

 倒れると言うよりも、腰が沈む感じ。「身体はまっすぐに」という、武術でよく聞くアドバイスは、このことを表したものかもしれません。

2018年12月16日日曜日

回らないで回る③ 縦に回る

 回転にも、縦回転と横回転があります。横回転は、水平方向の回転。この回転には手間がかかることは、以前も書いたとおり。
 同じ回転でも、縦の回転だと重力を利用できるので、モーメントを起こすのも止めるのも楽になるのです。


 左前の構えから一歩踏み出す時、体幹を水平に回すと、大きな抵抗を感じます。ところが、後ろ側(右側)の肩を腰を落とすようにして、左肩と腰の下をくぐらせるように回します(最初は、前体重の構えからが、やりやすい)
 感覚としては、振り子を持ち上げておいて落とすと、反対側に通り抜けてゆくような感じ。


 水平回転よりも、ずっと軽く回れることに気づくはずです。これは、重力によって回転を始められること、止めるのにも重力を使えることによるものです。


 ただ、この運動には、体幹部が柔軟なものだと意識する必要があります。体幹部を固い箱のように考えていると、動くことができません。
 まずは、肩と腰が柔らかく動かせるということを、より強く意識するところから始めます。

2018年12月12日水曜日

回らないで回る② 地面に頼らないモーメント

 回らないの意味は、地面からモーメントを受ける必要性を減らすことです。
 そこで、地面以外からモーメントを受ける方法があります。その一つは、腕、足などの内外旋でモーメントを作ること。
 内旋、外旋というのは、水平回転のことです。人体の場合、腕や足のねじりのことを指します。

  何かを押すと、自分も逆方向に押し返されるのが、反作用ですね。
 反作用は回転にもあり、何かを回すと、自分自身も逆方向に回転の力を受けます。

 簡単な実験です。
 片足立ちで「前へならえ」の格好をします。右か左へ腕を振ると、身体が反対方向に回るのがわかりますね。

 たとえば左前の構えを右前の構えに変えるとき。手を伸ばしたまま構えを変えると、体幹部に対して両手を右に振ることになり、体幹を左回しにする助けになります。

 足を前に運ぶときも、前足を内回し、後ろ足を外回しに軽く回しながら移動すると、足が出しやすくなります。
 面白いのが、まっすぐに立った姿勢よりも腰を落とした、つまり足を曲げた姿勢のほうが、反作用が大きくなること(モーメントの性質)。

 昔の格闘技の構えに腰を落とした姿勢が多いのは、こうした性質のせいかもしれない…というのは私の勝手な想像です。

2018年12月8日土曜日

回らないで回る①

 運動中に身体を回すには、モーメント(回転力)が必要です。しかし、地面を蹴って回ると、時間がかかる上に、動きを読まれやすいので、できるだけ地面には頼りたくありません。そこで出てくるのが「回らないで回る」です。

 合気道などで多用される、前足を軸にして、くるっと回る動作を例にします。

 普通に考えると図1のような足の動きになりますね。
 これは、身体から離れたところにある重量を回転させるのと同じ。加速にも減速にも、足を踏ん張って地面から力を受ける必要があります。


 さて、足を回すには地面から力を受けることが必要ですが、重心に向かって引き寄せたり、逆に押し出したりする動きは、地面から力を受ける必要がありません。

 そこで、足を回すのでなく、後ろ足を引き寄せてから、目的方向へ送り出します。重りを引き寄せて、その勢いで反対側へ飛ばす感じです。モーメントは、両足が接近したところで作用するだけなので、最小ですみます。

 また、この方法では回転が終わったところで止める必要もありません。動作の最後には、両足が広がって遠くにある「重い」状態なので、アンカーになってくれるのです。

 動いた結果としては回っているのですが、円弧を通らないことで、回ることについて回るモーメントを最小にしているわけですね。

 回る方法については、他にもまだまだ書くことがあったりします。体幹部を回らずに回す方法、地面に頼らずモーメントを作る方法、縦のモーメント等々。 
 次回以降、のんびりと。