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2021年6月3日木曜日

筋肉と会話する


 前回に引き続き、本能がじゃまをする話です。

昔、稽古を始めたばかりの頃は力任せに木刀を振り回していました。腕は今より一回り太く、重い木刀もなんのその。
しかし木刀の速度は今と比べ物にならないほど遅いものでした。

「力を入れると速くなる」というのも、本能的な誤解の一つです。
物理的には「力が強いと速くなる」正しいのですが、「力の実感」と「実際に伝わっている力」が異なるのが問題です。


●動作の効率

手で持つと重い荷物でも、リュックで背負うと軽く感じますね。同じものであっても、持ち方次第で重かったり、楽だったりするわけです。


動作も同じで、動き方次第で身体にかかる負荷は変わります。

例えば剣を振るだけでも、通るコースや遠心力の使い方で、必要な力の大きさは変わります。効率的になればなるほど、力は小さくてすみます。


ところが「力を入れると速くなる」と考えていると、楽に動ける方ではなく、手に抵抗感が伝わってくる振り方をしたくなります。そのほうが「大きな力を使っている実感」があるから。


さらにいうと「力を入れている」という実感は屈筋(曲げる・持ち上げる)の方がはっきりしているので、伸筋(伸ばす・支える)を使うべきところでも屈筋を使ってしまったり。

力は多く使うのですが、ムダばかりで速くなりません。


●練習は軽く、できるだけ軽く

では、どのように練習するか。逆に、力の実感がない動きを目指します。

抵抗感、手に伝わってくる感覚などに注意しながら、より軽く動けるということを基準にして練習を重ねてゆきます。


「筋肉と会話する」という言いまわしがありますね。効率の良い動きを目指す場合は「もっと頑張れ!」ではなく

「疲れてない?」と話しかけたいものです。